「高い」と言われる時と、「コスパがいい」と言われる時
仕事をしていると、「アンズフォトは撮影単価が高いね」と言われる時と、「アンズフォトはむしろコスパがいいよね」と言ってくれる方とに分かれます。同じ見積もりを出していても、受け取られ方はまったく違う。その違いは何なのかをずっと考えてきました。
私たちはもともと広告系のクリエイティブの世界にいたので、撮影のクオリティやライティングについては、それなりにこだわった画づくりをしているつもりです。さらに、雑誌・ポスター・Webサイトなど、撮影した素材がどう使われるかをイメージした上で、画角に余裕を持たせたり、逆にトリミングしない前提でフレーミングをギリギリに詰めたりと、媒体に合わせて撮り方を変えています。
事前の打ち合わせも含めて、「撮るだけ」ではない工程がすべて見積もりに乗っている。これが私たちの基本姿勢です。
VIPが集まるパーティーの、エンドロール撮影
あるクライアントから、VIPや著名人が集まるパーティーのエンドロール撮影をご依頼いただいたことがありました。
「VIPの方が集まる」と聞いていたので、社内のカメラマンの中でも特に技術力とセンスが高いスタッフをアサインし、撮影と当日編集を含めた見積もりを作成しました。金額は、エンドロール撮影をしている他社さんと比較しても業界平均から大きくかけ離れたものではなく、ごく一般的な水準です。
しかし、「高い」と言われ、結果としてエンドロール撮影は別の方に依頼が流れることになりました。撮影費用は、私たちの見積もりの5分の1ほどだったと聞いています。

当日、目にしたもの
当日、私自身は別パートの写真撮影で現場に入っていました。そこで目にしたのは、独立したてのフリーランスのような方がスマートフォンで撮影をしている姿でした。
仕上がったエンドロールは、撮影したスマートフォンの写真をスライドショー風に並べたもの。私が「エンドロール」という言葉から想像していたものとは、まったく別物でした。
5分の1の予算で受ければ、おそらくテンプレートに素材をはめ込むだけの作業になります。価格相応のアウトプットになるのは、ある意味で当然のことです。
金額の差は、何の差なのか
VIPの方たちは、目が肥えています。日常的に質の高い映像に触れている方々なので、「おっ」と感じる映像とそうでない映像の差を、無意識のうちに見極めています。
私たちが見積もりに乗せていたのは、単なる撮影と編集の工数だけではありません。誰がどう見るかを想定して、その期待を超えるための設計、当日の進行、機材構成、編集の方針 ―― そのすべてを含めての金額です。
同じ「エンドロール撮影」という言葉でも、その中身は会社によってまったく異なります。金額の差は、技術と段取りと意図の差です。
反省 ― 意図を伝えきれなかったのは、こちら側
この件を振り返って一番強く感じたのは、クライアントへの怒りではなく、自分たちの伝え方の不足です。
エンドロールは、盛り上がった会の最後を締めくくり、参加者の記憶に最も残る場所です。そこに何を込めるか、どう設計するかで、イベント全体の印象が変わる。だからこそ費用が発生するということを、私は十分に説明しきれていませんでした。
「自分が当然と思っていること」が、相手にも当然のように伝わっているとは限りません。クリエイティブの価値は、こちらが言葉にして伝えなければ理解してもらえない。そのことを、この件で改めて思い知らされました。
クライアントのクリエイティブセンスも、こちらは見ている
仕事をする上で、私たちはクライアントが何を求めているかを常に見ています。同時に、クライアントのクリエイティブに対する感度も、実はこちらは見ているのです。
価格だけで判断される関係では、お互いに気持ちのいい仕事はできません。クリエイティブの意図を共有できる方と、長くお付き合いしていきたい。そう思いながら、今日も一つひとつの見積もりと向き合っています。