撮影現場で「完成形」を見据えるということ
今回は二つの撮影現場から完成形を見据えた撮影とライティングについて書きました。
〜ライティングの基本と応用〜
最近の案件でも繰り返し感じるのは、「完成形をイメージして撮る」こと。これは、プロのフォトグラファーにとって基本中の基本ですが、実は難しい。
2025年の春の交通安全ポスターでのタレント撮影(警視庁様)では、白バックの撮影が行われました。事前に「桜の中を横断歩道で渡る」完成形のビジュアルが共有されていました。この完成イメージを受けて光の向きや雰囲気を調整したライティングを設計。

以下の点を特に重視:
自然な光の方向設定(ライティング)
違和感のない立体感(ライティング)
肌のくすみ防止処理(現像処理)
デザイナーとの会話でも、東京消防庁のポスターの話が出ました。肌が黒く沈んでおり、「怖い印象を与えてしまっている」と話題に。これは完成形のイメージ不足や、現像処理が印刷に適した処理できてないことが原因と推察されます。白背景は特に難易度が高いため、光の設計で世界観を補う意識が重要です。また、背景がある現場でも「何を伝えるか」を意識した照明設計が求められます。
具体的な技術として:
光量と方向性の調整
RAW現像での明るさ補正
白バランスの調整
撮影とは未来を描くこと。そのためにライティングは非常に大切な武器です。
伝えたいメッセージに合わせて光を組む意識を忘れず現場に臨みましょう。「伝統と革新」のあいだで
和楽器「鼓(つづみ)」を演奏するアーティストの宣材写真の撮影を担当しました。彼女の和的な雰囲気に合わせて、和装のビジュアルになりました。撮影テーマは「伝統と革新」という、古さと新しさを両立させたものでした。雰囲気を出すため、陰影を活かしたライティングに挑戦しました。

使用したライティングは、スプリットライト(横からの光)を当てて、顔の片側に影を作るライティング。グリッドを使用し背景に拡散しないよう光の拡散をコントロールしました。これにより、背景の暗さに被写体が浮き上がるような絵作りが可能になりました。和装にありがちな「のっぺり感」を避けるため、陰影のコントラストが鍵に。また、背景を暗くすることで「静かな主張」や「個性」を表現できます。
金の屏風を背景とした凛とした座り姿のライティング

コンセプト・イメージ 被写体が金の屏風の前に座り、浮き立つような存在感を演出する構図。ポートレートとしての「凛とした座り姿」を中心に据え、和の美意識と格式を表現。
ライティング構成
メインライト(フロントトップライト)被写体の正面からの1灯構成。
トップライトにはグリッドを使用し、光の拡散を防ぎ、被写体だけにフォーカスされた光が当たるようライティング。
• バックグラウンドライト
被写体の背後から、金の屏風に向けて照射。こちらにもグリッドを使用し、光の方向を制限しつつ、屏風に美しく光を回す。屏風が明るく輝き、その前に座る人物が“浮かび上がる”ような演出を実現。
革新的な鼓アーティストを表現するライティング

日本の伝統楽器「つづみ」を演奏するアーティストの革新性、現代性の二面性を、ライティングで表現。
伝統文化を現代的なアーティスト像として再構築する作品。
ライティング構成
2灯ライティング(左右)
左ライトに青、右ライトに赤のカラーフィルターを使用。被写体を交互に撮影し、それらを1枚の写真に合成(ダブリング)。
• 赤と青の光の二面性を強調し、伝統と革新、静と動などのアーティストとしての内面のコントラストを表現。
演出意図
伝統文化の象徴である「鼓(つづみ)」に、あえて現代的かつ奇抜なライティングを組み合わせることで、従来の枠を超えたアートの可能性を示す。
カラーフィルターによる左右の色分けが、アーティストの持つ多面的な個性を象徴。光の方向や質感を調整することで、物語を伝える写真に変えることができます。今後のアーティスト撮影やポートレートにも応用できるアプローチです。
株式会社アンズフォトについて
― 写真で“未来”を描く、表現のプロフェッショナル ―
株式会社アンズフォトは、写真家・安澤剛直が率いる、単なる「撮影代行」にとどまらない、本質を写す写真表現のプロ集団です。私たちが大切にしているのは、シャッターを切るその一瞬の中に、クライアントの「想い」と「未来像」を写し出すこと。企業の採用用プロフィール、ブランディング写真、個人のポートレート──そのどれもが、「今」をただ記録するためではなく、 “これから”を形にするための表現だと考えています。
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撮影前の丁寧なヒアリングを通じて、あなたの言葉にならないビジョンや理想像を引き出し、写真という手段で最も伝わるかたちに仕上げていきます。
ありのままを写すだけではない、 “見せたい未来”を一枚の写真に描く。それが、アンズフォトの使命であり、私たちのこだわりです。ぜひ一度、公式ウェブサイトをご覧ください。